大型犬で13歳といえば若い頃の迫力は減退し経験と歳を重ねた分落ち着きが出てくる。しかしいまでもテリトリー意識を表現するときの迫力には余力がある。
目の輝きといいテリトリー内に侵入者を入れまいとする構えの姿勢と吠え声を聞くとまだ数年は元気にいてくれそうに感じる。
その元気さがなくなれば次の段階に来るのだろう。
人間と同様、緊張感と刺激を与えた方が元気でいられると思っているので、今まで教えた選別を機会があればやらせてみようと思っていた。
ある日のドッグランで久しぶりに選別する機会があった。
早速、1回目、それは私の臭いをつけた布を5枚の中から探し出してくるもので「優」は迷はず正解をした。2回目は夫の臭い、その探し出す行動には迷いがあった。
どうして、日ごろ嗅ぎなれている飼い主の臭いなのに不正解なの。
そこで3回目はドッグランに来ていた人の臭で試してみた。もうその時点で嗅がされた臭いを嗅ぐ気もなかったようである。「どれ?これかな?お母さんの臭いでいいか」といった態度で適当に私のつけた臭いの布を持ってきたのである。
人間の目以上の役目を果たしている嗅覚をつかっているのだから、嗅がされた臭いの布を探し出す作業は「優」にとって当然できるだろうと思っていた。
しかし結果は予想外のものだった。
犬は臭いに対して敏感だとしても、その場の条件や臭いを嗅ごうという気持ちが起こらなければその臭いはわからないのである。布を鼻先に持っていったとき犬の方から鼻先をぴくぴくさせ空気を充分吸う動作は嗅ごうとする気持ちも充分あるときであるが、私はその行動を見落としウオーミングアップさせることを怠っていた。いわば正しく誘導できなかったのである。永年積み上げてきた共同作業に、私のやり方しだいで褒めも叱りに変わってしまうのは、犬にとってはなはだ迷惑千万なことに違いない。
だが、犬はやり方が悪い、指示がはっきりしないなど文句をいうわけでなく、やる気が失われテンションが下がるだけである。やはり飼い主の理解した程度しかできないのである。
同じ布を何度か位置を変え試してから、次の布を捜すように指示すれば出来たはずである。選別は臭いを嗅ぐ集中力が必要なので、これがダメならこちらの臭いをというのではどの臭いを捜したらよいか犬は迷ってしまう。
「優」は一回目の臭いから次の臭いに切り替えができていないまま次の臭いを捜しに行かされたのである。選別は犬の心理や行動を理解する上で学び多いことを知っていたにもかかわらず、できると思い込んでやったことは反省の至りである。
「優」ゴメン、ゴメン 充分できる能力はあるのに発揮させることが出来なかった。
正解すれば同じように喜んで褒めてやることにしている。そうすると「優」は若いときにした敏捷な身のこなしで跳び上がって私の左横にぴったりつく。
次の指示を待っているのである。
選別の競技(遊び)は動くことは少ないけれど刺激のある競技(遊び)である。
楽しく出来た後は犬も飼い主も満足感を共有しあえる。
この積み重ねは体験した人のみが知る魅力である。